領収書の電子化について(2)~会計における電子帳簿とは

今回も、前回に引き続き、TAX(税金)ライターとしてご活躍の阿部正仁氏に「電子帳簿について」解説していただきます。

第1回目の記事は以下からご覧ください。
領収書の電子化について(1)~中小企業が知っておきたい電子帳簿の概要

領収書の電子化

会計における電子帳簿は電子帳簿保存法でルールが定められています。まずは電子帳簿のアウトラインを見ていきましょう。

電子帳簿は4種類ある

電子帳簿は4種類あり、経理を合理化するためにはアウトラインを押えておきたいところです。

1.電子取引に関する書類
紙を一切使用しないで外部との やり取りをする書類です。取引対象者に従業員などの社内決済は含まれません。経理の合理化に適した電子帳簿といえるでしょう。
税法上、電子取引は次のように定められています。

【いわゆるEDI(Electronic Data Interchange)取引】
請求書などの書類のやり取りを企業間の独自のネットワークで行うことを指します。

【インターネット等による取引】
直接インターネットで企業間取引することを指します。具体例として、電子メールによるやり取り(メールや請求書などの添付ファイルを指します)、サイトを通じたやり取り(アマゾンや楽天などの通販サイトが該当します)が挙げられています。

【その他】
外部との請求書などをFAX サーバーで受信するなど紙を使用しない書類が挙げられます。

2.会計帳簿
おもに電子帳簿保存法に対応した会計ソフトで作成した会計帳簿のことを指します。

3.自社で作成した書類
おもに販売管理システムで作成した請求書、納品書、見積書などの書類のことを指します。

4.相手から受領した紙媒体の書類
相手から紙媒体で受領した領収書、請求書などの書類をスキャナーで保存します。

電子取引に関する書類を電子媒体で保存するルール

請求書など電子取引に関する書類を単に添付ファイルなどの電子媒体で保存するだけでは不十分です。そこで、保存するためのルールを紹介します。

1.税務署への申請は不要
他の電子帳簿と異なり、税務署へ申請して、税務署長などの承認を得る必要はありません。つまり、全ての会社に関係します。

2.基本的に 運用規定の作成が必要
電子取引のデータの改ざんを防止するため、「誰を書類の管理責任者にするのか」など具体的な管理方法について定めた運用規定の作成が求められます。たとえば、国税庁の通達での例示を要約すると次の通りです。ただし例外として、運用規定に代えてタイムスタンプを付与することが認められています。

【自らの規程のみによって防止する場合】
・データの訂正削除を原則禁止
・業務処理上の都合により、データを訂正又は削除する場合の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録及び保存)
・データ管理責任者及び処理責任者の明確化

【取引相手との契約によって防止する場合】
電子取引の種類を問わず、取引相手とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行うこと

しかし運用規定を作成する代わりに、電子取引に関する書類にタイムスタンプを付与するが認められています。タイムスタンプ(デジタルタイムスタンプ)とは、電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明する電子的な時刻証明書です。要するに「運用規定の作成」または「タイムスタンプの付与」のどちらかを選択することになります。

3.電子媒体の代わりに紙媒体の保存が認められる
電子取引に関する書類は電子媒体で保存するのが基本的なルールですが、プリントアウトして紙媒体での保存も認められています。

会計帳簿を電子媒体で保存するルール

中小企業が会計帳簿を電子媒体で保存するためには、電子帳簿保存法に対応している会計ソフト の導入が必須です。具体的なルールを見ていきましょう。

1.検索機能があること
2項目以上を抽出して検索できることが電子媒体で保存するためのルールです。たとえば、取引金額100万円の売上高を検索するとします。その場合、「勘定科目は売上高、取引金額は100万円」で検索できることが求められます。

2.データの削除・訂正の履歴が残せること
データ登録後に1週間過ぎてから削除や訂正をする場合、その履歴を残さなければなりません。たとえば、売上高100万円を削除したり、取引金額を「100万円→80万円」に訂正したりした場合、その履歴を残す必要があります。つまり、元のデータ「売上高100万円」を確認できることが求められます。

3.範囲指定ができること
たとえば、日付を4月1日~4月30日、取引金額を100万円~300万円など範囲を指定してデータを抽出できることが求められます。

4.税務署への申請が必要
電子媒体で保存する期間の開始日の3カ月前までに税務署へ申請し、税務署長などの承認を得る必要があります。申請する際には次のことが求められます。
・電子帳簿の記載(例 仕訳帳、総勘定元帳など)
・適用される税法の種類(例 法人税法 消費税法など)
・電子帳簿の保存方法
・使用するコンピューターやプリンタなど機器のメーカー、機器の名称、台数、設置場所の記載
・使用する会計ソフトのメーカー名、メーカーの住所

また、添付書類はおもに次の通りです。
・システムの説明書
・運用規定
・電子保存をアウトソーシングする場合はその契約書の写し
など

5.運用規定の作成が必要
たとえば、会計ソフトへの入力者やチェック者などを定めた書類の作成が求められます。

自社で作成した書類を電子媒体で保存するルール

電子媒体で保存するためには電子帳簿保存法に対応している販売管理ソフト の導入が必須です。保存するルールは会計帳簿と同じであり、次の通りです。

1.検索機能があること

2.データの削除・訂正の履歴が残せること

3.範囲指定ができること

4.税務署への申請が必要

5.運用規定の作成が必要
たとえば、納品者や請求書の作成者などを定めた書類の作成が求められます。

相手から受領した紙媒体の書類を電子媒体で保存するルール

紙媒体の書類でスキャナー保存するため、他の電子帳簿よりもルールが複雑です。具体的なルールを紹介します。

1.検索機能 があること
会計ソフトや経費精算システムなどの機能により、スキャナー保存した画像をクラウドやサーバーなどにアップすれば、検索が可能です。

2.データの削除・訂正の履歴が残せること

3.範囲指定ができること

4.税務署への申請が必要
スキャナー保存の特徴は、ファイルへの記録方法を記載する点です。たとえば、領収書はPDF形式、請求書はXML形式、納品書はTIF形式といったように申請書へ記載します。

5.運用規定の作成が必要

6.次の条件をクリアできるスキャナー・スマートフォン・デジタルカメラを用意する
(イ)大きさがA4以下の書類:解像度が200dpi相当以上、24ビットカラーであること
(ロ)大きさがA4を超える書類:上記(イ)に加えて、紙の大きさの情報が必要
(ハ)スマートフォンやデジタルカメラで撮影した場合の特例:書類の大きさに関係なく、(イ)と同じ条件をクリアすること

7.スキャナー保存をする単位は書類の全てを網羅すること
具体的には次の2パターンに区分されます。

(イ)複数枚の書類を1枚の画像にまとめられる場合
たとえば、複数枚の領収書を1台の機器でまとめてスキャナー保存をすることが認められています。

(ロ)1つの書類を1枚の画像に収まり切れない場合
たとえば、冊子になっている契約書なら書類のすべてをスキャナー保存して、複数枚の画像を作成する必要があります 。なお、複数枚の画像を一つのフォルダにまとめることはできません。

8.電子媒体で保存するプロセスを整備する

電子媒体で保存するプロセスを整備するためのルール

相手から紙媒体の書類を受領して、電子媒体で保存するためのプロセスは細かく定められています。また、小規模事業者以外と小規模事業者ではプロセスが異なります。そこで、具体的なルールを見ていきましょう。1~3はすべての事業者に共通し、4は小規模事業者のみ適用できます。

1.基本的なプロセス
相手から受領した紙媒体の書類を次のプロセスで電子化していきます。
(1)紙媒体の書類をスキャンする
(2)スキャンした電子媒体の書類をクラウド上やサーバーにアップロードし、タイムスタンプを付与する
(3)タイムスタンプを付与した電子媒体の書類である画像と紙媒体の書類が一致しているかをチェックし、相互けん制をする
(4)画像と紙媒体の書類を定期検査(最終チェック)して、両者が一致していれば保存 または破棄するかどうかを選択する

2.紙媒体の書類を2つに区分する
そもそも紙媒体の書類は2つに区分できます。それは一般書類と重要書類であり、電子媒体で保存するルールが異なります。

(イ)一般書類
お金の流れと連動しない書類のことを指します。
例)注文書、見積書、保険契約申込書、電話加入契約申込書、クレジットカード発行申込書、口座振替依頼書、商品や材料などを購入した者が作成する検収書・商品受取書など、自社が作成した納品書の写し など

(ロ)重要書類
お金や物の流れと直結する書類のことを指します。
例)契約書、領収書、預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、請求書、納品書、送り状、輸出証明書 など

3.一般書類の保存方法
相手から受領した紙媒体の一般書類は次の手順で電子化していきます。
(1)3カ月に一度など会社の定めた期間でタイムスタンプを付与する
(2)上記(1)の後、画像と紙媒体の書類が一致していれば、保存 または破棄するかどうかを選択する
(3)万が一、紙媒体の書類と画像が一致していなければ、受領者へ差し戻す

4.重要書類の保存方法
紙媒体の重要書類を電子化するまでのプロセスについて、普小規模事業者以外が採用する基本的なルールと小規模事業者の特例に分けて説明します。なお、小規模事業者に該当する範囲については、後述します。

(イ)基本的なルール
紙媒体の重要書類を電子化するまでには、本人を含めて最低3人必要です。人員は従業員または外注先を問いません 。もちろん、外注先には顧問税理士も含まれます。

(1)受領した紙媒体の重要書類にタイムスタンプを付与する
受領した日から最長で「1カ月間+7日間」までにタイムスタンプを付与します。付与する人については、受領した本人も含めて誰でも大丈夫です。

(2)相互けん制をする
受領した本人を除いた確認者がタイムスタンプを付与した画像と紙媒体の書類が一致しているかどうかをチェックします。一致していなければ、受領者へ差し戻します。

(3)定期検査をする
タイムスタンプを付与した画像と紙媒体の書類が一致しているかどうかのチェックを受領した本人と相互けん制の確認者を除いた人が実施します。

(4)画像と紙媒体が一致していれば、重要書類を保存または破棄するかどうかを選択する
※一致していなければ、確認者へ差し戻します。

(ロ)小規模事業者の特例
小規模事業者は顧問税理士が定期検査をするのを条件に、相互けん制を省略できます。それが小規模事業者の特例を受けるメリットで す。それでは、紙媒体の重要書類を電子化するまでのプロセスを紹介します。特に事前の申請は不要です。

(1)本人が受領した日から3日以内にフルネームで署名して、タイムスタンプを付与する
たとえば、出張先で領収書を受領したとします。そのとき、受領した本人が受領した日から3日以内にスマートフォンなどの機器で撮影して、フルネームでの署名とタイムスタンプを付与します。署名の代わりに押印することは認められません。

仮に3日間を過ぎた場合は、基本的に小規模事業者の特例は活用できません。その場合は、基本的なルールに則って、相互けん制が必要となります。

(2)顧問税理士が定期検査をする
小規模事業者の特例での定期検査は顧問税理士に限定されています。そのため、他の人が定期検査をすることは認められません。

(3)紙媒体の重要書類を保存または破棄するかどうかを選択する

(ハ)小規模事業者の範囲
業種に応じて、経営者を除いた従業員が次の人数以下である法人と個人事業主のことを指します。
・製造業や建設業など:常時従業員数が20名以下
・小売業、卸売業、サービス業:常時従業員数が5名以下

(ニ)やむを得ない事情により本人が受領後3日以内でタイムスタンプを付与できない場合は?
たとえば、海外出張で領収書を受領したとします。そのとき、インターネットの環境の不備でサーバーなどへ送信できずにタイムスタンプを付与できない場合は、特例として受領後3日を超えて署名、タイムスタンプを付与することは認められます。しかし、「単に忘れていた」「忙しかった」という理由は通用しません。

会計における電子帳簿を導入するポイント

電子帳簿の導入は最初の方向づけが肝心です。たとえば、経理の合理化を意図していたのに、実際は紙媒体で保存するより手間がかかれば本末転倒です。それでは、経理事務の人件費を中心とした費用対効果の小さいコストにお金をかけてしまう羽目になります。そこで、経理の合理化をゴールに電子帳簿の導入するポイントを解説します。

目的を明確にする

電子帳簿を導入する目的は費用対効果の小さいコストの削減です。税金と同じように、会計帳簿の作成や書類の保存に人員をかけても、売上や利益が増えないのは明らかです。そのため、節税対策と同様に電子帳簿の導入により費用対効果の小さいコストを下げるという目的を明確にしましょう。また、次のメリットについても意識しましょう。

1.事務が効率化できる
領収書を日付順など規則に沿ってスクラップブックに貼る作業や経費精算システムの導入したりして従業員や経営者の手間が省けます。

2.保管コストが削減できる
紙媒体での書類の保管は面積を要します。その点、電子保存はスペースを取りません。たとえば、業務量が増えて広いスペースが必要となったとします。当然、スペースを広くすれば負担する家賃が増加します。しかし、紙媒体での保存から電子保存に切り替えることで、新たなスペースの確保が回避できます。

3.危機管理に役立つ
BCP(Business Continuity Plan)という災害などリスクが発生したときに重要業務が中断しないことが実現しやすいです。たとえば、紙媒体での書類を保存する箇所は1カ所に限られ、火災により紛失すれば、事業に支障をきたしてしまいます。ところが、電子保存は複数個所で保管できるため、紛失による重要業務の中断が回避できます。

紙媒体の書類のやり取りを電子取引にシフトする

電子帳簿の導入に成功するかどうかは、いかに紙媒体の書類のやり取りを電子取引にするのかにかかっています。たとえば、商品を購入したときの請求書などを紙媒体で受領すると、ファイルに閉じて保存しなければなりません。当然、ファイルに閉じこむのに人手を要します。一方、購入先との請求書のやりとりを電子媒体に代えたり、FAXサーバーで保管したりするなど電子取引にシフトすれば、紙媒体で保存する手間が省けます。

また、仮に電子保存するにしてもスキャナー保存してタイムスタンプの付与、相互けん制、定期検査をする必要がなく、運用規定を作成するだけで済むのも電子取引のメリットです。規定の作成は顧問税理士に依頼することになるため、電子取引にシフトする事務的手間はほとんどかかりません。

要する電子帳簿の導入で最も簡単なのが紙媒体の書類のやり取りを電子取引にシフトすることです。

電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入する

電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入するプロセスは2つ あります。

1.最低条件
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトであることを事前に確認することに尽きます。検索機能や訂正履歴を残す機能など会計帳簿を電子媒体で保存する条件は電子帳簿保存に対応した会計ソフトが解決してくれるからです。手間はかかりません。

また、領収書などをスキャナー保存したものにタイムスタンプを付与する機能も会計ソフト選びにかかっています。通常は会計帳簿の作成のオプションとしてタイムスタンプを付与する機能がついています。

もちろん、メーカーに問い合わせれば、電子帳簿保存法に対応しているかどうかを教えてくれます。実際はほとんどの会計ソフトが対応しています。

2.CSV読み込み機能がついている会計ソフトを導入するのがポイント
電子帳簿の導入は経理の合理化が目的です。そのため、領収書などの資料を参照して、会計ソフトへ手入力を極力減らすことがポイントとなります。インターネットバンキングや経費精算システムなどのデータをCSVで切り出し、自動的に会計ソフトへ読み込ませて、会計帳簿の作成を合理化しましょう。

できれば経費精算システムを導入する

そもそも経費精算システムは、紙媒体で受領した領収書をスキャナー保存してタイムスタンプを付与したり、交通費や取引先に対する香典代など領収書を受領できない経費を精算したりすることができ、それは電子取引による書類に該当します。社員が交通費などを精算するとき、出金伝票など所定の用紙に記入する手間が省けます。

一方、会社は経理の合理化につながります。たとえば、従業員が請求する交通費が正しい交通経路に基づいていることを経費精算システムの機能で把握できます。紙媒体と違って、従業員が記入した交通経路の信ぴょう性についての確認作業が省略できます。

経費精算システムがCSVで切り出しができる点は見逃せません。データを会計ソフトに自動的に読み込ませることができます。たとえば、営業担当者が複数いて交通費を負担する頻度が多かったり、紙媒体で受領する領収書の枚数が多かったりする会社には経費精算システムはおすすめです。また、経営者が経費の精算をする回数の多い場合は、事務的手間を省くことにも役立ちます。

顧問税理士を最大限に活用する

会計に関する電子帳簿の導入は決してハードルは低くありません。しかしそれは、すべて自社で行う場合の話です。そのため、会計ソフトやスキャナー保存をする機器の活用などシステムに頼るのはもちろん、顧問税理士を最大限に活用することで電子帳簿の導入のハードルを大きく下げることができます。そこで、顧問税理士を活用するポイントについて解説します。

1.電子帳簿の導入を顧問税理士に打診する
多くの税理士はクライアント企業に対して付加価値の高いサービスを提供したいと考えています。「人件費など費用対効果の小さいコストを下げたい」と理由で電子帳簿の導入を相談すれば、応じてくれる可能性は高いです。

2.税務署への申請手続きを任せる
電子帳簿保存法に基づく税務署への申請手続きは複雑です。たとえば、申請するときに運用規定の添付が求められます。また別の例として、電子帳簿の保存を外注先に依頼する場合、その契約書のコピーの提出が求められるます。

3.運用規定の作成を依頼する
特に電子帳簿の導入には、運用規定の作成が必須であるため、自社で作成する場合、手間がかかります。しかも、電子帳簿保存法の知識を要します。それでは、電子帳簿を導入するハードルが高くなってしまいます。

そこで、電子帳簿の導入段階で作成する運用規定は顧問税理士に任せることが大切となってきます。

4.紙媒体で受領した書類の保存または破棄する判断を相談する
そもそも紙媒体で受領した書類の保存または破棄を吟味するのは、得意先など取引先とのトラブルが発生した場合、法的に証拠となる書類の保存が必要だからです。紙媒体で保存すれば問題ありませんが、電子媒体で保存した書類は基本的に証拠として認められません。そのため、安易に電子媒体で保存する書類を破棄するとトラブルが発生したときに不利となってしまいます。したがって、紙媒体で受領した書類の保存または破棄を自社で判断するのはリスクが伴います。

たとえば、得意先が契約書で定めた支払期日までに売上代金を自社の銀行口座へ振り込まないとします。そのとき、契約書を紙媒体で保存すれば、「契約違反」と得意先に抗議することができます。しかし、電子媒体での保存では、証拠として認められないため、最悪の場合は泣き寝入りするしかありません。

ただ、消費者金融など契約書の冊数が膨大になる傾向がある業種は、紙媒体での保存はスペースの確保が大変です。当然、保存スペースには家賃という費用対効果の小さいコストがかかってしまいます。しかし、電子媒体のみで保存するのはトラブルが発生したときのリスクが高いです。そこで、紙媒体で保存する代わりに、マイクロフィルムを用いることをおすすめします。永久保存できるのはもちろん、紙媒体と同じようにアナログの保存であるため、証拠して認められます。

顧問弁護士がいない中小企業は、保存または破棄の判断を顧問税理士に相談することをおすすめします。

5.電子媒体で保存する書類の吟味を顧問税理士と一緒に行う
電子帳簿保存法は電子媒体で保存する書類を細かく分けることができます。具体的には、拠点単位や部署ごとで電子帳簿を導入するかどうかが決められます。たとえば、総務部門の小口現金の領収書だけを電子媒体で保存することを選択できます。また、経営者が使う交際費の詳細について、顧問税理士を除いた他人に見られたくない場合は、その部分だけ電子帳簿の対象から外すことも可能です。

要するに、電子媒体で保存する書類を自由にカスタマイズできます。方向性を間違えると電子帳簿の対象とする書類の変更手続き面倒なので、導入する段階で慎重に吟味する必要があります。

そのため、電子媒体で保存する書類を吟味するとき、自社だけで判断するよりも、中小企業の経理について多くの事例を知っている顧問税理士に相談したほうが失敗する確率を下げることができます。

6.電子取引のメール本文の削除について相談する
たとえば、購入先から領収書が電子メールの添付ファイルで届いたとします。添付ファイルの保存をするのはもちろんですが、書類によってメールの本文も保存しなければならない場合があります。ちなみに領収書の場合はメール本文の保存が必要です。その分岐点については顧問税理士に相談しましょう。

社内ルールを整備する

電子帳簿を導入しても、経理の合理化につながらなければ意味がありません。また一歩間違えると、社内における不正の温床になり得ます。そのため、電子帳簿の導入する際には、社内ルールの整備が求められます。

1.経費の水増し請求を防止する
相手から受領した紙媒体の書類をスマートフォンやデジタルカメラで撮影したものが電子帳簿と認められる反面、経費の水増し請求のリスクが高くなります。たとえば、営業担当者が得意先を接待したときの領収書を受領したとします。紙媒体なら領収書は1店舗1枚です。しかし、電子媒体で保存する場合は複数枚の領収書を作成することができます。その営業担当者が複数枚の領収書を社内で精算すれば経費の水増し請求です。

そのため、受領した本人がスキャナーで保存する場合は、必ずフルネームで領収書に 直接署名することを徹底させましょう。電子帳簿保存法では、受領した本人と別の人が画像と紙媒体の書類を確認すれば、署名は必要ありませんが、法律よりも経費の水増し請求の防止を優先させるのがいいでしょう。

2.領収書の撮影後は3日以内にタイムスタンプを付与することを徹底周知する
そもそもタイムスタンプを付与するのは、電子媒体の書類を改ざんできないようにするのが目的です。経費の水増し請求の防止など内部けん制のために、紙媒体の書類を受領した本人がスマートフォンなどでスキャナー保存した場合は、3日以内にタイムスタンプを付与することを従業員に徹底周知しましょう。

特にスキャナー保存で小規模事業者の特例を受ける中小企業は撮影後3日以内にタイムスタンプを付与することが必須です。それによって、後は顧問税理士が確認するだけで済み、経理の合理化につながります。

仮に書類を受領した日からスキャナー保存するまで3日を超えると、受領した本人とは別の人が画像と紙媒体の書類を確認しなければなりません。それでは、経費の合理化の足を引っ張り、確認者を設置する必要が生じてしまいます。当然、確認者の設置に伴い、人件費がかかります。費用対効果の小さいコストを下げるのが電子帳簿の導入である以上、撮影後3日以内にタイムスタンプを付与することを従業員に徹底周知しましょう。

3.中小企業の実情に即したスキャナー保存の方法を検討する
小規模事業者の特例では、一般的に自分で署名、スマートフォンで撮影、タイムスタンプを付与する対象となる書類は「領収書」でしょう。しかし、たとえば一人親方の会社なら相手から受領する書類の量は多くありません。そのため、紙媒体の見積書や請求書についてもスキャナーで保存、署名、タイムスタンプを付与することは可能です。

要するに、規模が小さく相手から受領する書類の量が少なければ、領収書を除いた書類も自分でスキャナー保存を完結させることは可能です。

おすすめのソフトと機器

中小企業の実情に即したおすすめの会計ソフトや機器などを見ていきましょう。

1.会計ソフト
費用が安く、税理士が対応している会計ソフトがおすすめです。たとえば次の3つが挙げられます。
・弥生会計
・クラウド会計ソフト freee
・MFクラウド会計

2.経費精算システム
経費精算システムは、交通費など領収書の受領が伴わない経費の支払いが頻繁に発生する場合におすすめです。経費精算システムを使用しなくても、スキャナー保存した領収書については会計ソフトでタイムスタンプを付与することができます。経費精算システムのおもなものは、次の3つです。
・楽々精算システム(CSVを読み込めるすべての会計ソフトに対応)
・MFクラウド経費(MFクラウド会計を使用する場合におすすめ)
・交通費精算 freee(交通費の精算に対応し、会計freeeを使用する場合におすすめ)

3.販売管理ソフト
使用する会計ソフトと同じメーカーのものを使用するのがポイントです。
・弥生販売
・クラウド会計ソフト freee(会計ソフトの機能に付いています)
・MFクラウド請求書

4.機器
最近のスキャナー、スマートフォン、デジタルカメラは性能がよいため、どの機器でも対応できます。したがって、今まで使用している機器で差し支えありません。

電子帳簿保存法は税理士業界の新たな市場になり得る

最後に話が少し変わりますが、税理士業界向けに一言書かせていただきます。

クラウド会計の発展により、預かった領収書などの書類を参照して、会計ソフトへの入力をクライアント企業の代わりに担当する記帳代行業務が縮小傾向にあるのは承知の通りです。実際、機械に奪われそうな仕事ランキングに「会計・経理事務員」が挙げられています。そのため、記帳代行業務を行っている会社は、クライアント企業に対して付加価値の高いサービスの提供が求められています。そのひとつが電子帳簿保存法のスキャナー保存による小規模事業者の特例の定期検査です。

電子帳簿のメリットとして、紙媒体での保存スペースを減らすことで、家賃など管理費用の削減が期待できます。しかし、電子媒体で保存した書類を保存または破棄すべきかどうかを的確に判断できるのは、弁護士を除いては顧問税理士のみでしょう。

小規模事業者の特例の定期検査は税理士の独占業務です。電子帳簿の導入を機に、定期検査の市場への参入を検討してみてはいかがでしょうか。

著者:阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。