従業員7人の会社が急にIT化を決断した理由

こんにちは。
弊社では、中小企業のIT化のお手伝いをしています。

具体的な事例をブログでもご紹介したいと思いつつも、相談内容の性質上、なかなかお話することが難しいのが現状です。そこで、今回は、弊社の事例ではありませんが、ITコンサルティングの仕事をされている薮内氏に経験談を寄稿いただけることになりました。従業員7人の町工場がIT化を決断したときのお話です。「ITコンサルティングってどんなことをしてもらえるの?」と思われている方の参考になればと思います。

※当社の事例ではない点、ご了承のうえお読みください

売れるのに儲からない!町工場からの問い合わせ

今回ご紹介するIT化への相談は唐突に始まりました。以前にITコンサルティングをした企業から、知り合いの企業をコンサルティングしてほしいと依頼がきたのです。

実際に出向いて見るとそこは町工場でした。
自己紹介をして経営者の方とお話をすると以下のような内容を伝えられました。

「売れているのに儲からない!IT化をすれば儲かるのか!?」

詳しく話を聞いてみると、特殊な部品を作っている町工場であり需要は間違いなくあるとのこと。資料などを開示してもらっても売れていることは間違いがなさそうな状況です。しかし、経営者は儲からないと言い、IT化でそれが解決できると考えている状態です。

そのため筆者としては「全てのことがITで解決できるとは限らない……。過度な期待はどうしたものか」と不安を感じる状況 でした。

そんな中で始まったのが今回のコンサルティングです。
結果からお伝えすると、途中で紆余曲折はあったものの、最終的には良い形にまとまりました。

以下では生産管理をIT化してより儲かる会社へとするために、筆者が提案したIT化についてご紹介します。

ITコンサルタントから見た経営の課題

この町工場にはITコンサルタント目線から見ても経営の課題がありました。主なものは、生産管理と勤怠体系の課題です。そこで、この2つの課題を中心にIT化による改善を目指しました。

適当な生産管理で無駄なコストが発生

前述したとおり、製品は作れば売れるだけの需要があるものでした。在庫を抱えすぎることによって利益が下がっているような状況は見受けられず、売れ行きに関しては特段の心配をする必要はなさそうでした。

ただ、売れているものの、原価計算などが適当である課題が見えました。

製品を作成するために必須の材料は、とりあえず言い値で仕入れているような状態。また、昔から同じ作り方を続けているせいか、どれぐらいの量を使って、どの程度のものを作っているのかは職人さんの感覚に依存していました。

最低限の設計書などは用意されているのですが、天候などを踏まえて感覚で原材料が調節されていたのです。

赤字になることはないものの、この原価計算管理、生産管理に関する問題が儲からない理由であり、ここをIT化するべきであると直感的に感じました。

勤怠体系の課題

勤怠体系に問題があると感じる部分がありました。実態を把握することは難しいですので正確な数値は出せませんでしたが、人件費が必要以上に発生しているような状況が見受けられました。

町工場で働いている職人は、社員ですので基本的には定時内で作業をしています。ただ実態としては、職人は、調子が良いときに一気に作業を進める傾向があり、調子が良いと残業をして進め、逆に調子が悪いと定時内であっても休憩していることが多く、勤務時間の概念が曖昧になっていました。

それに対して会社側は、出社時間と退社時間の管理しかしておらず、必要以上の残業代が発生していることが明らかでした。つまり、人件費がかかりすぎているために、利益が出ていなかったのです。

費用面で一度は否決されたIT化

初回は生産管理システムを社内で小さいサーバーとして立てる案を提示しました。自前でサーバーを用意する方法でしたので、「オンプレミス」でのIT化です。ただ、こちらは費用面を中心に採用されることがありませんでした。どのような理由が中小企業でのIT化を妨げたのかを分析します。

そもそもなぜ生産管理システムに注目したのか

生産管理に注目した理由はIT化にあたり業務を大きく変えることなく効果を期待できるものだったからです。

今までの業務に近い材料発注や外注、同程度の生産数の確保を続けながら、コストの削減が期待できたのです。特にこちらの企業の場合には発注・受注ともにFAXと電話連絡の手書きという「紙運用」が大半でした。そのため、紙運用での作業をIT化することで作業の負荷軽減や必要以上の発注による原材料過多、手書き資料の紛失による納入ミス、在庫切れによる失注などを防げると考えたのです。また、Excelは利用できる従業員がいましたので、その人を中心にIT化業務を学習してもらうことで、教育コストを低減することも期待できました。

人件費の問題は課題とは見受けられたものの、すぐに働き方を見直すのは難しく、経営者より今すぐのIT化に適さないと判断されました。

利益が吹き飛ぶIT化の見積もり

初回に提出した見積もりが否決された理由は単純であり、予算感がお客様と噛み合っていないことでした。

こちらから提案したIT化の費用は、町工場で1年分に相当する利益に匹敵する額。工場の需要などを踏まえて、ある程度のシステムを導入するプランでしたので高額なものとならざるをえなかったのです。ただ、新しくシステムを導入することを考えると、相場程度の費用での提案といえるものです。

IT化には費用が必要であることは事前に説明していましたが、想定外の金額が提示されたことで許容できないものであったのです。

キャッシュフローの面からすぐには捻出できない費用

キャッシュフローの面から初期費用はすぐに捻出できませんでした。

特にこちらの町工場では設備投資に積極的であり、利益の半分以上をこちらに利用していることもあるような企業でした。そのため、キャッシュのうちIT化に利用できる部分は限られていて、キャッシュフローの側面から捻出できる金額には上限がありました。

ただ、この点に関しては事前に確認をしていなかった筆者側のミスでもあります。顧客の要望を実現できるシステムを提案することが仕事ではありますが、予算面で噛み合わなければ意味がありません。依頼を受ける側もする側も費用の感覚については、ある程度の認識あわせが必要なのです。

IT化することで職人の「カン(勘)」が消滅するという懸念

今回のIT化で全く考慮していなかったことが、生産管理をIT化することで職人のカンが失われないかということです。

ITコンサルタントは数値を基準にして理論を展開しますので、このような直感的なものに対する意見が出ることは予想外でした。

前述したとおり、基本の設計書はあるものの職人のカンで多少の変更があり、天候や温度によって原材料のバランス変更もしているとのことでした。IT化でこれらを厳密に管理することで、カンが失われて品質が下がらないかとの懸念が発生しました。

筆者からすれば毎回原材料が変動することのほうが品質に影響すると考えます。しかし、逆にIT化することで品質が下がるのではないかという懸念もあったのです。

この点は一般的な製品では全て設計書が存在していて原材料の量は統一されていることを説明して理解をいただきました。カンに頼らず設計書で必要とされている量を元に、システムで発注量を計算することもご理解いただいた部分です。

クラウドサービスの利用で費用面は解決!IT化への決断

次に、初回の提案から出てきた課題を踏まえて、費用を抑えられるようクラウドサービスを利用した提案を行いました。結果、こちらの提案を受け入れてもらうことができてIT化が実現しました。

時代の流れに沿ってクラウドサービスをイチから提案

まずは、クラウドサービスとは何かというところから、丁寧に説明をしていきました。

普段から馴染のない方にとって、クラウドサービスの仕組みを理解していただくのは難しいのですが、今回はクラウドサービスの例を実際にデモとしてお見せして、特に心配をすることは無い旨を理解してもらうに至りました。

また、職人さんのカンに頼らない生産管理についてもご説明をしました。確かにIT化では実現できないことや、AIなどを利用しなければ実現できないことが職人さんのカンに該当した可能性はあります。しかし、一般的にはIT化された品質管理が良いものとされています。時代の流れとしてITでの品質管理が求められることを説明し、クラウドサービスを利用したIT化への理解を得ました。

クラウドサービスで費用は半額以下へ!

クラウドサービスを利用することで、見積もりの金額は半額ほどまで下がり、お客様が要望されていた予算内におさめることができました。内容としても、ERP系のクラウドサービスを使うことで、原価管理、受発注管理をIT化でき、当初考えていたことが実現できています。

クラウド化をすることによって費用が削減できた理由は大きく分けて2つです。

1つ目はクラウドサービスの利用となったことでハードウェアの導入が不要となったことです。初回の提案では小規模ではあるもののサーバーを用意する想定でした。これにより、初期費用が大きく抑えられ、なおかつサーバー代などの維持費の削減にも繋げられ理解を得やすくなりました。

2つ目はクラウドサービスを利用することによって、各種ライセンス費用が削減されたことです。オンプレミスでアプリケーションを導入するとなると、初期費用としてさまざまなライセンス費用が必要です。しかしクラウドサービスを利用すると、これらの費用もまとめた価格が提示されます。ランニング費用はかかるものの、初期費用を抑えることができるようになり、導入のハードルが下がりました。支払いの体系が変わったことによって、結果として支払総額も少なくなりクラウドサービスのメリットを存分に受けられるようになりました。

サポート体制と費用面の両方が小さな企業をIT化させた

今回の提案でIT化が実現できた理由は、クラウドサービスを提供する企業のサービスが需要とマッチしたからだと考えられます。言い換えると中小企業でもIT化できるサービスが提供されていたということです。

町工場のようにITの専門家がいない企業であっても、クラウドサービスであれば手厚いサポートが用意されているプランがあります。そういったプランを選択すると、導入後もスムーズ。今回のケースだと、土日祝を除く営業時間内であれば電話対応が可能で、メールも1営業日以内に対応してもらえます。IT化しても使いこなせるかどうか不安になるケースは多々あります。しかし、クラウドサービスならではのサポートを提案したことにより安心感を得られたようです。

また、今回提案したシステムは10人以下のプランが用意されていて、最低限の利用者数での契約が可能となりました。結果、ランニングコストに関しても抑えられる契約を組めました。

中小企業ではIT化をしても使いこなせるのかという不安が常につきまといます。そのため、クラウドサービスでサポートが充実しているものが注目される傾向にあります。また、利用者数に応じた柔軟な料金体系が設けられているかどうかも重要視されています。今回のケースはこれらが両方重なったものであり、結果として小さな企業がIT化へと踏み切りました。