中小企業がIT化する際に気をつけたい「導入費」と「維持保守費」の違い

中小企業がIT化を進めるにあたり気をつけなければならないことはいくつかあります。これらを意識しておかなければ、後になってからトラブルの原因となることもあります。事前にそのようなことは減らしておくことが重要です。

気をつけたいことは全て説明したいのですが、今回はその中でも「導入費」と「維持保守費」といったお金に関係する部分を取り上げます。特に維持保守費に関してはIT化にあたり忘れさられている部分も多いものです。今回はそれぞれの費用の特徴と違いについてご説明します。

IT化には2種類の費用が必要となる

IT化をするにあたり大きく分けて2種類の費用が必要となります。導入費と維持保守費と呼ばれるものです。どちらもIT化で必要な費用ではあるのですが、その内容は大きく異なったものとなっています。それぞれの特徴をまずは以下にまとめます。

金額 発生頻度 費用の調節
導入費 高額になりやすい 基本的には初回のみ 開発規模によりある程度の相場は存在
維持保守費 少額から高額までまちまち ITシステムを使用する限り 人件費カットなどで削減も可能

概要を簡単にまとめました。ただ、このように記述されてもなかなか具体的には理解しにくいことでしょう。以下では導入費と維持保守費をさらに細かくご説明します。

IT化のスタートとなる導入費

IT化を進めるにあたり最初に発生する費用が導入費です。どのような企業であっても、IT化を進めたいのであれば導入費を支払う必要があります。導入するシステムの内容にも異なりますが、高額な支払いをしなければならないこともあります。

どのようなことであっても、導入時には何かしらの費用が必要です。例えばお店を開店したいのであれば内装工事が必要ですし、商品を販売したいのであれば仕入れが必要です。それらと同様にIT化においても初期費用が発生します。

どの程度の導入費が発生するかはシステムの規模に概ね比例します。小さい規模のIT化であれば数百万円で済むこともありますし、大手企業のような大きい規模のIT化であれば1億円以上が必要となることもあります。中小企業であれば500万円から1,000万円程度をまずは見込んでおくと良いでしょう。

IT化を維持するための維持保守費

IT化を維持するための費用に維持保守費と呼ばれるものがあります。維持も保守も同じような意味であると感じるかもしれません。維持保守費の維持と保守とはそれぞれ以下の意味で利用されています。

【維持】
システムを使い続けるように日々メンテナンスすること
【保守】
システムの改善をしたり修理をするなど変更を加えること

維持保守費はこれらをまとめた金額を指していることが一般的です。つまり、日々ITシステムを利用するための費用全般なのです。また、保守の意味を見ると何かしら大きな修正を加えるようなイメージがあるかもしれません。しかし、ITシステムでは小規模な修正もよくある話であり、そういった費用も保守費であると考えられます。

導入費と維持保守費の違いまとめ

導入費と維持保守費の違いは金額と発生するタイミングです。導入費は言うまでもなく導入時ですので最初に必要となる費用です。この費用の支払いができなければIT化は始まらないと考えても良いでしょう。

それに対して維持保守費はITシステムが稼働してからの費用です。システムを安定・安心して利用できるようにするための費用です。導入費とは発生するタイミングも異なりますし、金額も小さくなる違いがあります。

IT化で中小企業の負担となる導入費の内訳とは

導入費は中小企業の負担になることが多い部分です。IT化にあたり多くの初期投資を必要とします。ただ、なんとなく高額になることは理解できていても具体的な内訳は理解できていないこともあるでしょう。IT化で中小企業の負担となりやすい、導入費の内訳について説明します。

サーバーやソフトウェア購入などの実費

サーバーやソフトウェアなどを購入する実費が導入費には必要です。実際に購入するものですので支払いの金額についてもイメージしやすいものです。

実際に購入するものがそのまま請求されますので、必要な費用は支払をするしかありません。ここの部分で導入費を削減することは難しいと考えておきましょう。

アプリケーション開発の委託費

アプリケーションの開発費も導入費です。
何かしら自社向けにアプリケーションを開発してもらう場合、そのシステムは独自開発となることが一般的です。自社のためだけに開発してもらうことになりますので、導入費として発生します。

この部分はどの程度の金額が発生するのかアプリケーションの開発規模によって異なります。中小企業であっても大規模な開発を必要とすれば費用は高額になる部分です。

プロジェクト推進やIT戦略策定のためのコンサルティング費

IT化を進めるにあたり、プロジェクト推進やIT戦略を策定する作業をコンサルティング会社に依頼することがあるでしょう。このような費用も導入費に含まれます。

ただ、これらの費用は全ての企業で発生するものではありません。自力でプロジェクト推進ができたりIT戦略の策定ができるのであれば、高い費用を支払ってコンサルティング会社に依頼する必要はありません。外部に依頼するかはよく検討しなければならない導入費です。

ただ、外部に依頼をしなくとも社内で対応する人員は必要です。その分のコストが発生することは考慮が必要です。

ベンダー選定など事前準備の諸経費

ベンダーが反社会勢力ではないかなど、事務的に様々な手続きをしなければなりません。この部分もIT化の初期費用であると考えられます。

ただ、どのような取引をする場合でもベンダー選定には事前準備が必要となることでしょう。そのため費用は必要となるものの、IT化で特筆して述べることはありません。

IT化でイメージしにくい維持保守費の内訳とは

IT化で必要なる費用の中でもイメージしにくいものが維持保守費です。ITに詳しくない人であれば維持保守費と聞いてもイメージできないかもしれません。

しかし、維持保守費もIT化において重要な費用の一つです。ここでは維持保守費には具体的にどのような支払いが求められるのかについてもご説明します。

サーバーレンタルなどのインフラ費

システムを利用するにあたりサーバーなどをレンタルすることでしょう。また、サーバーと接続するにあたりインターネット回線を用意することも考えられます。これらシステムを利用するにあたり基盤の役割を果たしてくれるものを「インフラ」と呼びます。このインフラ費が維持保守費に含まれます。

基本的にインフラ費は毎月での支払いや年額での支払いとなっています。ただ、どちらの方式で支払いをする場合であっても、1回支払いをすれば終わりというものではありません。システムを利用し続ける限り発生する維持保守費なのです。リース契約など支払いが終了するケースもありますが、基本的には恒常的な支払いが必要なものであると考えておきましょう。

インフラ費は利用するシステムや会社の所在する環境によって大きく変動します。例えばオフィスにネットが整備されている場合には、システムを利用するためのインターネット料金が安く済む可能性があります。逆に独自に回線を用意する必要があるのであれば、その分だけ割高になってしまう可能性があります。努力ではどうしようもない部分も含まれる維持保守費です。

アプリケーションなどのライセンス費

システムを利用するにあたり様々なアプリケーションを導入します。これらのアプリケーションを組み合わせることによって、私たちはシステムを利用できると考えましょう。

法人で利用するアプリケーションの場合、利用者数に応じて年額や月額の費用が発生するものが多々あります。買い切りの仕組みではなく、利用者数などに応じて利用する限りは支払いが求められるのです。そのため、これらアプリケーションのライセンス費も維持保守費に含まれます。

利用するアプリケーションによってライセンス費は決定されます。どんなに高額なアプリケーションがあったとしても、それがIT化にあたり必須のものであれば導入するしかありません。維持保守費の中でも削減しにくい部分となっています。

似たようなアプリケーションがあれば、比較的ライセンス費の安いものを導入するということも検討できるでしょう。維持保守費を意識するのであればライセンス費が安いアプリケーションを選択することも悪いことではありません。ただ、安いものを利用したことによって、システムが使いにくいものになっては意味がありません。ライセンス費は維持保守費の中でも削減しにくく、支払うしかないものであると割り切ってしまうのも一つです。

問い合わせなどに対応する人件費

円滑にシステムを利用したいと考えているのであれば、システムの専門家を問い合わせ窓口に用意するべきです。この問い合わせに対応する人員の人件費も維持保守費に含まれます。

システムを利用する人は全員がITの専門家ではありません。ITに詳しい人であれば自分で解決できるようなことも、誰かしらに問い合わせをしなければ解決できないことがあります。そのような人向けに用意される人たちの人件費を指しています。

ただ、問い合わせ窓口の人数は調節をしやすい部分ではあります。システムを導入してスグは多くの人を用意しなければならないこともありますが、システムが安定稼働すれば少ない人でも対応できる可能性があります。問い合わせの数を見込んで人を用意することで、維持保守費の中でも適切な金額に調節しやす部分となっています。

問い合わせに対応する人を全く用意しないという選択肢もあります。IT化に関わったメンバーがその都度問い合わせに対応することでも運用はできることでしょう。ただ、そのような運用にしてしまうと負担が増えてしまう可能性も高まります。システムを円滑に利用するためにも、問い合わせ専用の人を用意して維持保守費として人件費を支払うのが理想的な運用です。

専門家に任せてしまうアウトソーシング費

以下で詳しくご説明をしますが、維持保守は専門家に任せるアウトソーシングが可能です。維持保守だけを専門としているような会社もありますので、そのような企業に作業を依頼してしまうのです。

アウトソーシングすると金額が高額になるイメージがあるかもしれませんが、実際には専門家に依頼したほうがコストが削減できることもあります。維持保守のプロに外注する費用も維持保守費の一部です。

導入費以外にも維持保守費を最初から見込むことが重要

導入費は事前に見込んでいる企業が大半です。しかし、維持保守費は導入費ほど見込まれていないケースのほうが大半です。

重要なことは維持保守費も最初から見込んでおく必要があるということです。どの程度を見込んでおく必要がと良いのか、また維持保守費を左右するアウトソーシングはどう考えれば良いのかをご説明します。

維持保守費は年額で導入費の10%~20%必要と言われる

一般的に維持保守費は年額で導入費用の10%~20%必要とされています。これぐらいの費用がITシステムを利用するだけで必要となるのです。

金額に大きく差が出る理由はどの程度アウトソーシングを利用するかで左右されるからです。アウトソーシングを利用することでコストダウンできることもありますし、どうしても社内でやらざるを得ずコストが高くなってしまうこともあります。

維持保守費は体制や手厚さによって金額が大きく左右される部分ではあります。ただ、概ね導入費用の10%~20%は必要となる可能性があることは理解をしておきましょう。

アウトソーシング費には4つの評価指標がある

上記でご説明したとおり、維持保守費にはアウトソーシング費が含まれています。専門家に任せてしまうことで結果として費用を安くするものです。

アウトソーシング費は先方からの言い値になってしまうこともありえるのですが、正しく評価することで削減できる可能性があります。つまり、正当な価格でアウトソーシングできるようになる可能性があるのです。また、費用を下げてもらいたいなどの交渉をする場合にも、評価指標を理解していれば武器にできます。

アウトソーシング費を適切に評価するための指標は明確に定められているわけではありません。例えば以下のとおり4つが考えられます。指標の名称と計算式、概要をまとめます。

指標 計算式 概要
即日回答率 即日回答件数/相談全件数 問い合わせが即日回答された割合
納期遵守率 納期遵守件数/相談全件数 納期が遵守された割合
引受率 引受件数/相談全件数 問い合わせが受け付けられた割合
対応時間遵守率 対応時間遵守件数/相談全件数 事前に決められた対応時間が遵守された場合

これらの指標を利用することで、アウトソーシング費が妥当であるかを判断することが可能です。もちろん、これらの指標だけで判断できると言い切れるわけではありません。ただ、数値の悪い部分があるのであれば、それを根拠に値下げの交渉なども検討できます。

導入費の削減は難しくとも維持保守費の削減は可能

一般的に導入費の削減は難しいものです。IT化の方針を妥協しない限り、なかなか導入費を削減はできません。どうしても必要最低限の金額は支払いをする必要があると考えると良いでしょう。

それに対して維持保守費は削減が可能です。アウトソーシング費用の削減やサポート体制の手厚さ、保守サイクルの変更などで費用低減できます。この点は導入費用と維持保守費の大きな差とも言える部分です。

IT化の導入費だけではなく維持保守費が発生し続けることを意識する

導入費用のことだけを考えている企業が多々あります。IT化を進めて維持保守費が発生することを知ってから困る企業があるぐらいです。

どのようなシステムを導入する場合でも維持保守費は必要です。金額の高低はあるものの、維持保守費なしで利用できることは無いと考えましょう。IT化を推進するのであれば、目先の導入費だけに注目せず維持保守費が発生し続けることも意識しなければなりません。