中小企業のIT化にはクラウドサービスの利用がおすすめ

ケースバイケースという前提はありますが、中小企業からIT化のご相談を受けた場合、目的に合ったクラウドサービスをおすすめすることが多いです。
そこで、今回はクラウドサービスとは何か?について、ITに詳しくない方向けに解説します。

クラウドサービスの概要

「クラウド」という言葉は耳にしたことがあっても、説明しようとすると途端に言葉に詰まってしまうというのはよくあることかもしれません。
決して難しくはないのですが、説明しにくいというのはありそうです。

総務省が運営する「国民のための情報セキュリティサイト」によると、次のように説明されています。

クラウドサービスは、従来は利用者が手元のコンピュータで利用していたデータやソフトウェアを、ネットワーク経由で、サービスとして利用者に提供するものです。利用者側が最低限の環境(パーソナルコンピュータや携帯情報端末などのクライアント、その上で動くWebブラウザ、インターネット接続環境など)を用意することで、どの端末からでも、さまざまなサービスを利用することができます。

 

具体例を用いて考えてみましょう。

身近な例ですとGmailはクラウドサービスのひとつです。
パソコンやタブレット、スマートフォンなど、端末によらず、Webブラウザからメールの送受信ができますね。
(メールを端末にダウンロードすることも可能ですが)特に設定等を行わなければ、メールは端末ではなく、クラウドに保存されています。
そのクラウドにインターネットを介してアクセスすることで、閲覧したり、メールを送信したりできるのです。

メールを閲覧するのに必要なものは、インターネッとができる環境のみ。

 

次に、従来広く利用されていた方法を考えてみます。
企業内にメールサーバーを用意して、メールの運用を行っていました。
この場合、メールを使うためには、Outlookなどのメールソフトをインストールしたパソコンが必要です。

会社でメールサーバーを用意し、各自のパソコンにメールソフトを用意して、初めてメールが遣えるようになります。
それに加えて、メールのセキュリティ対策も必要になり、運用、管理するためのコストと時間が必要です。

 

ここでは、メールを例に考えてみましたが、クラウドサービスは何もメールに限ったものではありません。
勤怠管理システムや営業管理システム、顧客管理システム、在庫管理、会計ソフト、オンラインストレージ、e-ラーニング、テレビ会議システムなど、多様なサービスがあります。

まとめていきます。

クラウドサービスを使うメリット

導入が簡単

これまでの業務用ソフトウエアは、サーバーやソフトの購入が必要でした。このため初期費用が高額になりやすく、慎重に吟味する必要がありました。これがクラウドサービスの場合は、導入コストがかからないケースが多く、月単位など短期間でも契約が可能なため、実際に導入してみて良ければ使い続けるなど、リスクの少ない形で導入ができます。
また導入するにあたり、サーバーの設定などが不要のため、IT部門の負担が軽減できますし、ITの専門家が自社にいない場合も導入しやすいです。
申込を行ったその日から利用できるサービスもあります。

運用が楽(運用コストの大幅な削減)

社内でサーバーやソフトウエアの維持管理、特別なセキュリティ対策などが不要のため、そこに人手を割く必要がありません。パソコンにインストールして使うタイプのソフトの場合は、手動でのバージョンアップなどが必要なケースもありますが、クラウドサービスであれば、常に最新のものが提供されます。社内にはITスキルの高い方もいれば、詳しくない方もいらっしゃるので、手動でのバージョンアップを徹底するのは、思いのほか大変です。結果的にクラウドサービスを使う方が、運用コストが大幅に削減できるケースも多くなります。

従量課金で使える

クラウドサービスの良い面として、「月額○円」「1ユーザー○円」といった形で使える点にあります。社員が増えたら、その分だけ追加しやすいですし、逆に退職したら、来月から減らすことも可能。また、例えば容量が足りなくなったときなども、課金をすればすぐにストレージを追加してもらえます。このため急な環境の変化にも対応しやすく、無駄な費用がかかりにくいのはメリットでしょう。
こういった手続きもオンライン上から簡単に行うことができます。

パソコン以外にスマホやタブレットからも利用できる

クラウドサービスによりますが、インターネットの環境さえ用意できれば、パソコン以外にスマホやタブレットからも使えるものが多いです。外出先から気軽にアクセスできるのはメリットのひとつでしょう。

クラウドサービスのデメリット

オンライン環境がないと利用できない

クラウドサービスを利用するには、インターネット環境が必須です。何らかの理由でインターネットに障がいが起きると、利用できなくなります。
またインターネットを介してやりとりするため、どうしてもセキュリティ面でのリスクもあります。十分なセキュリティ対策が行われているクラウドサービスを選ぶことが必要です。

自社に合せたカスタマイズが難しい

ほとんどのクラウドサービスは、自社に合せたカスタマイズが難しいです。
ただし、オプションが用意されている場合は、ある程度までオプションを組み合わせることで対応できるケースもあります。

サービス中止の可能性がゼロではない

サービスを提供する側のサービス停止などにより、突然クラウドサービスを利用できなくなる可能性もあり得ます。

 

ITの専門家を自社で用意するのが難しい中小企業も、クラウドサービスを使うことで、自社のIT化を進めていくことが可能です。

弊社では、お客様が抱える問題・課題に応じて、解決策をご提案し、サポートいたします。
特定の業者ではなく、中立的な立場であるからこそ、より最善のご提案ができるのだと考えています。
困ったことがあったときに、「ちょっと聞いてみよう」と思ってもらえるような存在になれたら幸いです。
当社だけで解決できない問題については専門家とチームを組み解決に努めます。

領収書の電子化について(3)~給与計算に関する電子帳簿とは

今回も、前回に引き続き、TAX(税金)ライターとしてご活躍の阿部正仁氏に「電子帳簿について」解説していただきます。

過去の記事は以下からご覧ください。
領収書の電子化について(1)~中小企業が知っておきたい電子帳簿の概要
領収書の電子化について(2)~会計における電子帳簿とは

領収書の電子化
会計だけでなく給与計算も書類を電子媒体で保存することが認められています。特に中小企業の場合、会計と給与計算を兼任するのが普通であり、給与計算の電子帳簿についての知識はぜひとも押さえておきたいところです。そこで、電子媒体で保存するためのルールと導入するポイントについて解説します。

電子媒体で保存できる給与計算に関する書類

給与計算に関する書類を電子媒体で保存できるのは、おもに次の3種類です。

  1. 給与明細書や源泉徴収票など従業員へ交付する書類
  2. 賃金台帳など会社で保存する書類
  3. 年末調整に関する書類

従業員へ交付する書類を電子媒体で保存するためのルール

給与明細書や源泉徴収票はプリントアウトして従業員へ交付するのが一般的でしょう。しかし、紙媒体に代えて、電子媒体での交付と保存が認められています。それでは、具体的なルールを見ていきましょう。

1.電子媒体で交付することについて事前に従業員の同意を得る
給与明細書や源泉徴収票はプリントアウトして、紙媒体で交付するというのが基本です。電子媒体で交付することは例外であるため、税法上では事前に従業員の同意を得ることが求められます。実務上では、従業員に同意書を書いてもらいます。口約束では、後々のトラブルにつながりかねないからです。もちろん、従業員から同意を得るのは最初の1回だけです。同意書については4で詳しく説明します。

2.給与明細書や源泉徴収票を従業員へ電子媒体で交付する方法
電子媒体で交付する方法は次の通りです。

【電子メールを用いる方法】
給与明細書や源泉徴収票をPDFファイルなどで保存し、電子メールに添付して従業員へ交付します。

【従業員が閲覧できるようにする方法】
クラウド上や社内LANで従業員が自分の給与明細書や源泉徴収票を閲覧できるようにする方法があります。実際に交付する作業が省略できます。

【磁気媒体を用いる方法】
MOやCO-ROMなど磁気媒体に給与明細書や源泉徴収票を記録して、従業員へ交付する方法があります。

3.給与明細書や源泉徴収票はいつでもプリントアウトできる体制にする
「紙媒体の給与明細書や源泉徴収票がほしい」と求められたら、会社は従業員の求めに応じる義務があります。特に医療費控除などの確定申告をする際には、基本的に電子媒体の源泉徴収票は添付資料として認められません。

4.同意書の内容
次の内容を記載した電子媒体の同意書に「電子交付について承諾する旨、承諾日、従業員の氏名」などを入力してもらいましょう。もちろん、紙媒体で配布して従業員に記載してもらう方法もあります。

【電子媒体で交付する書類の名称】
おもに「給与明細書」と「給与所得の源泉徴収票」が挙げられます。

【電子媒体の種類や具体的に交付する方法】
電子媒体で交付する方法に応じて、次の内容を記載しましょう。

交付する方法 記載内容
電子メールを用いる場合 電子メールで送信する旨、メールアドレス など
従業員が閲覧できるようにする方法 データを閲覧に供する旨、給与明細書や源泉徴収票のデータを掲載するホームページアドレス、閲覧方法 など
磁気媒体で交付する方法 CD-COMなど交付する媒体の種類

【ファイルへの記録方法】
XML形式、PDF形式、暗号化してファイルに記録する旨およびその複合化方法などを記載します。

【交付予定日】
給与明細書なら「給与支給日に交付する」、源泉徴収票なら「毎年12月25日に交付する」など、具体的な交付予定日を記載します。

【交付開始日】
交付開始日を記載します。

【その他参考となる事項】
特に記載しなくても差し支えありませんが、「(従業員の)求めに応じて紙で交付することができる」など明記して、電子交付についての安心材料を記載するのが有効でしょう。

5.従業員から紙媒体での交付に切り替えることを求められたら
会社は従業員の求めに応じる義務があります。仮に従業員から紙媒体での給与明細書や源泉徴収票の交付を求められたら、電子媒体で交付することは認められません。

6.電子媒体の給与明細書や源泉徴収票は画面表示をできるようにする
給与明細書や源泉徴収票は画面表示ができ、交付を受けた従業員が肉眼でデータを確認できるようにする必要があります。たとえば、文字がコード化されているなど、画面上でデータが確認できない場合は、画面表示の条件を満たしません。

賃金台帳などの書類を電子媒体で保存するためのルール

会社は労働基準法で定められている保存すべき書類を紙媒体に代えて、電子媒体で保存することが認められています。具体的なルールは次の通りです。

1.電子媒体での保存が認められている書類の範囲
支店または店舗単位で次の書類を電子媒体により保存することができます。おもな範囲は次の通りです。

【賃金台帳】
労働基準法で定める賃金台帳は次の内容が記載されていることを指します。

  • 氏名
  • 性別
  • 給与計算期間(例 20日締めの給料なら○月21日~○月20日)
  • 労働日数
  • 労働時間数
  • 残業時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数
  • 基本給、通勤手当など賃金の項目とそれぞれの金額
  • 給与の一部を控除した金額

【労働者名簿】
会社は次の内容を記載した労働者名簿を保存しなければなりません。

  • 性別
  • 住所
  • 従業員を雇用した年月日
  • 退職年月日および退職理由(解雇の場合は解雇理由も含む)
  • 死亡退職の場合は退職年月日および死亡原因

※従業員が30人以上の会社に限り、従事する業務の種類の記載が必要です。

【労働条件を明示した書類】
従業員と雇用契約を結ぶ場合、事前に次の条件を提示する必要があります。

  • 契約期間(正社員のように「期間の定めなし」を含む)
  • 従事する業務
  • 就業場所
  • 始業時間および就業時間
  • 残業の有無
  • 休憩時間および休日
  • 給料の金額
  • 健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険の有無

【労働関係に関する重要な書類】
雇用契約書や出勤簿などが挙げられます。

【従業員の健康診断の結果表】
会社は従業員の健康を管理する義務があるため、健康診断の結果表を保存する義務があります。

【社会保険に関する書類】
健康保険、厚生年金、労災保険、雇用保険に関する書類のことを指します。

2.保存するルール
電子媒体の書類を画面上に表示でき、労働基準監督署や税務署の職員が肉眼で確認できることが条件です。また、これら職員の求めに応じてプリントアウトできるようにする必要があります。電子帳簿保存法とは違い、具体的なルールは設けられていません。

3.保存方法
給与計算ソフトへ入力したり、紙媒体の書類をスキャナー保存したりする方法が挙げられます。

年末調整に関する書類

年末調整に関する書類は次の2つに区分できます。

  • 従業員から預かる生命保険料控除証明書など紙媒体の書類
  • 「給与所得者の扶養控除等申告書」と「給与所得者の保険料控除申告書 兼 給与所得者の配偶者特別控除申告書」など会社または従業員が作成する書類

両者では電子媒体で保存するルールが異なります。

1.従業員から預かる紙媒体の書類
電子帳簿保存法のスキャナー保存と全く同じルールであり、一般書類です。預かった書類をスキャナー保存して、タイムスタンプを付与します。その後、相互けん制により本人と別の人が画像と紙媒体の書類を突き合わせて、定期検査による最終チェックを得て、保存または破棄を選択することになります。

2.会社または従業員が作成する書類
事前に税務署への申請が必要ですが、電子帳簿保存法のルールとは次の点で異なります。

【申請期限】
電子帳簿保存法は電子帳簿を導入する日の3カ月前ですが、年末調整の場合は還付金を計算する直前までに申請すれば大丈夫です。

【税務署長などの承認は不要】
電子帳簿保存法は税務署長などの承認を得られなければ電子帳簿の導入はできませんが、年末調整の場合は申請すれば即承認されます。

【保存方法を選択する】
電子媒体で保存する方法について次のいずれかを選択します。
・クラウド上やサーバーなどでの管理する
・CD-COMなど磁気媒体に記録する

【本人確認ができる措置を講じる】
紙媒体と同じように電子媒体でも作成した書類が従業員本人のものであることを確認できる状態にして会社へデータ送信する必要があります。その手段として、次のいずれかを選択することになります。
・従業員本人がマイナンバーカードを用いて電子署名をする
・会社は従業員ごとにID(識別番号)とパスワードを設定する

3.一人別源泉徴収簿は作成する必要なし
年末調整に一人別源泉帳簿を用いる会社は多いですが、あくまでも従業員の所得税の計算資料にすぎません。そのため、電子帳簿の対象から外れています。

税務調査で従業員の所得税の計算過程を知るため、毎月の給与の金額が記載されている必要があります。一人別源泉帳簿がその役割を果たしますが、しかしそれは賃金台帳で代用できます。

したがって、無理して一人別源泉帳簿を作成する必要はありません。また、給与計算ソフトへ入力すればプリントアウトできますが、それも不要です。

給与計算で電子帳簿を導入するポイント

そもそも給与計算は会計と違って、「確定申告の直前にまとめて行う」など先延ばしにすることが許されません。 しかし、給与明細書をプリントアウトして封に入れる作業は手間がかかり、それに伴う人件費は費用対効果の小さい費用です。そのため、給与計算で電子帳簿を導入する意味があります。それでは、導入するポイントを見ていきましょう。

目的意識を明確にする

電子帳簿の導入で事務的手間を省くのはもちろん、給与計算は先延ばしや計算ミスが許されません。だからこそ、毎月の給与や年末調整のデータを正確に入力することに集中できる体制づくりが大切となってきます。

給与明細書や源泉徴収票の電子交付が給与計算の合理化には必須

特に給与明細書を紙媒体で交付する手間は従業員の人数に比例します。たとえば、従業員が5人と10人の会社を比較すると、作業量の違いは倍となります。また、給与計算ソフトの指定用紙を用いるとなおさら手間がかかります。データを指定用紙の枠内に印字するために、印字位置の調整が大変だからです。たとえば、「給与明細書の印字位置を右に何ミリ移動させようか」など細かい微調整を毎月行うことになります。

そのため、給与明細書や源泉徴収票を電子交付する方向へ持っていくことの意味があります。まずは確実に従業員の同意を得ることが電子帳簿の導入のスタートでしょう。そこで、説得する手段として、従業員にとってのメリットを紹介します。

1.給与明細書が自宅で復元できる
たとえば、従業員が住宅ローンを申し込むとします。当然、銀行は収入証明書の提出を求めてきます。申込時期年初なら源泉徴収票がその従業員の収入証明書になり得ますが、仮に申込時期が7月の場合、直近の給与明細書の提出を要求してきます。そのとき、給与明細書が紙媒体で交付されている場合、再発行を会社に依頼しづらいでしょう。その点、電子媒体で交付を受けている場合は、PDFファイルを自宅でプリントアウトすれば済む話です。

2.給与明細書の再発行が依頼しやすい
そもそも従業員が給与明細書の再発行を依頼しづらい原因に、会社側の事務的手間を察知している点が挙げられます。確かに紙媒体で交付する場合は、給与明細書の発行に手間がかかります。特に給与計算をアウトソーシングしている会社は、再発行を外注先に依頼しなければなりません。それでは、従業員の再発行の求めにタイムリーに対応することは難しいです。

しかし、給与明細書を電子交付している場合、事務的手間は従業員への電子メールに添付ファイルを送信するだけです。仮に給与計算をアウトソーシングしている場合でも同様の手間で済むため、タイムリーに対応してくれる可能性が高いです。

3.退職者の源泉徴収票を送付する手間が省ける
年末になると再就職先へ源泉徴収票を提出するため、退職者が会社へ発行を依頼するケースはよくある話ですが、辞めた会社へ電話を入れるのは心理的ハードルが高いです。そのハードルを少しでも下げるために事務的手間のかからない電子媒体での交付が有効です。

会計に関する電子帳簿の導入よりもハードルが低い

会計に関する電子帳簿は細かいルールがたくさんあり、税務署への申請と税務署長などの承認が必要です。しかし給与計算の場合、従業員から預かる年末調整に関する書類を除いて、手続が簡単です。たとえば、賃金台帳を電子媒体で保存するとします。税務署への手続は不要であり、給与計算ソフトへ入力してデータを保存するだけで済みます。

また、賃金台帳など会社で保存する書類は、たとえば社会保険に関する書類をスキャナー保存しても、検索機能やタイムスタンプを付与するなど電子帳簿保存法で求められている条件を満たす必要はありません。ただ、電子媒体で保存するだけで済みます。

以上のように、給与計算に関する電子帳簿の導入は会計よりもハードルが低いのです。

紙媒体または電子媒体で保存するかどうかを吟味する

電子媒体は事務的手間が省けて、保存スペースを必要としないため、給与計算の合理化に向いています。しかし、電子媒体の書類はトラブルに陥ったとき、紙媒体の書類と比較して、不利な取り扱いを受けてしまいます。

たとえば、勤務不良の従業員を合法的に解雇したとします。それを合法的と裏づけるためには証拠として認められる書類を用意しなければなりません。そのため、雇用契約書や査定表などを安易に電子媒体で保存すると、解雇理由が証明できず、会社側が不利になってしまいます。

要するに証拠として必要な書類は紙媒体で保存しておくほうがいいでしょう。また、人材派遣業など多くの雇用契約者がいる場合、雇用契約書が膨大になる場合はマイクロフィルムで保存する方法に代えても、証拠として認められます。

おすすめの給与計算ソフト

使用している会計ソフトと同じメーカーの給与計算がおすすめです。

  • 弥生給与
  • 人事労務 freee
  • MFクラウド給与

次回が最終回になります。
まとめを行いますので、どうぞお楽しみに!

著者:阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

【G Suite】データ探索とは?Googleのスプレッドシート、ドキュメント、スライドが仕事を効率化してくれる

こんにちは。

GメールやGoogleカレンダーなど、有料無料問わずGoogleのサービスをお使いの方は多いですね。
今回は、スプレッドシート、ドキュメント、スライドをより便利に、そして効率的に作業が進められる「データ探索」機能をご紹介します。
知っておいて損はない機能ですので、「データ探索って何?」という方は、ぜひお読みください。

データ探索とは?:エクセル・ワード・パワーポイントも今はAIに手伝ってもらう時代

以前はマイクロソフトのOffice製品をお使いの方がほとんどでした。
でも近年はGoole製品をお使いの方が増えてきています。
ちなみに、弊社でもGoogle製品を積極的に活用しています。

Google製品は、次の表のようにOffice製品と互換性があることはよく知られていますね。

 グーグル マイクロソフト
 表計算 スプレッドシート Excel
文書作成 ドキュメント Word
プレゼンテーション スライド パワーポイント

では、Google製品には、AI(人工知能)が搭載されていることをご存じでしょうか。
それが今回ご紹介する「データ探索」です。
AIと聞くと難しそうに感じてしまうかもしれませんが、ボタンをクリックするだけで使える機能なので、抵抗感を取り払ってお試しいただきたいと思います。

ここから、より具体的に、どんなことができるのかツールごとに確認していきましょう。

Googleスプレッドシート:グラフの作成と分析

スプレッドシートに搭載されている「データ探索」を使うと、表の書式を提案してくれたり、グラフや分析結果を自動で表示してくれます。

【データ探索の使い方】
データ探索ボタンの位置

画面右下にある「データ探索」ボタンをクリックするだけです。

書式について
スプレッドシートの書式について

提案された表示形式の中から、適用したいものをクリックするだけで、簡単に見栄えの良い、分かりやすい表になります。
気に入った候補がない場合は、「編集」をクリック、色などを変えることが可能です。

グラフと分析について
スプレッドシートのグラフについて

Googleがデータを元にて、グラフの提案と分析を行ってくれます。
予め範囲を選択しておくと、その選択範囲に関する分析が行われ、特に指定しなかった場合はカーソルのある位置に基づいて分析してくれます。

スプレッドシートのグラフ2

グラフにマウスを当てると、どのデータがグラフに使用されているのか一目瞭然。
今回だと2015年のデータはグラフの凡例の色と同じ「青」、216年は「赤」、2017年は「黄色」、2018年は「緑」でハイライトされます。
エクセルやスプレッドシートに慣れていない方にも、分かりやすいと思います。

グラフをドラッグアンドドロップすると、シートにグラフを挿入できます。

スプレッドシートの分析について

分析までしてくれますよ。

スプレッドシートのデータ探索は完璧ではない

今回だと「2018」となるべきところが「単位:本数 2018」となっているなど、必ずしも完璧ではありませんが、一からグラフを作るよりも簡単です。

そしてエクセルが苦手な人にとって、この機能はとても心強い味方になるでしょう。

Googleヘルプ:スプレッドシートでグラフと分析情報の候補を表示、使用する

Googleドキュメント:画像の提案

Googleドキュメントの「データ探索」もスプレッドシート同様、右下のボタンをクリックすると利用できます。
サンプルに用意したドキュメントは、当ブログの人気記事のひとつです。

「データ探索」をクリックした結果がこちら。

ドキュメントのデータ探索

インターネット上から資料に合う画像を提案してくれます。
今回だと、「G Suite」「Office 365」のロゴの提案がありました。
ここで提案される画像は「改変後の再利用が許可された画像」で、著作権侵害の心配はいりません。

ドキュメントの画像挿入

画像にカーソルを合わせると「+」マークが表示され、「+」をクリックするとドキュメントに画像を挿入できます。
そして、ドキュメントに画像を挿入すると、画像の出展URLが表示されますので、念のため画像の出典は確認しておいたほうが安心ですね。
このURLは変更したり、削除したりすることもできます。

ドキュメントのデータ探索のキーワード

検索ボックスにキーワードを入れると、ドキュメント内にウェブ検索、画像検索、ドライブ内の検索結果を表示させることが可能。
提案された画像の中に良いものがなかったときは、画像検索で探すと、他の候補も出てくるので、試してみるといいでしょう。

Googleヘルプ:ドキュメントでコンテンツの候補を表示、使用する

Googleスライド:レイアウト・デザインの提案

Googleスライドの「データ探索」のボタンも画面右下です。

スライドのデータ探索

「データ探索」ボタンをクリックすると、レイアウトの候補が表示されます。
気に入ったレイアウトをクリックすれば、適応できます。

スライドのデータ探索にて、キーワードで検索

またドキュメントと同様に、検索ボックスにキーワードを入れて情報を検索することも可能。
画像検索を使えば、スライド作りに必要な画像を探すのも簡単です。

レイアウトの候補が表示されないときは、Googleヘルプによると

レイアウトの候補が表示されるようにするには、次のようにします。

  • スライドのデフォルトのテーマやレイアウトを使用する。
  • スライド内のテキストの量を減らす。
  • スライドから図形を削除する。
  • すべての画像のサイズを 100×100 ピクセル以上にする。

とのことです。

Googleヘルプ:プレゼンテーションでレイアウトの候補を表示、使用する

今回は以上になります。
当サイトでは、他にもG Suiteに関する情報を発信しています。
ご興味があるようでしたら次のページの下部に目次を入れていますので、ぜひご覧ください。

参考:G Suiteを活用した業務効率化のご提案

弊社では、お客様が抱える問題・課題に応じて、解決策をご提案し、サポートいたします。
特定の業者ではなく、中立的な立場であるからこそ、より最善のご提案ができるのだと考えています。
困ったことがあったときに、「ちょっと聞いてみよう」と思ってもらえるような存在になれたら幸いです。
当社だけで解決できない問題については専門家とチームを組み解決に努めます。

領収書の電子化について(2)~会計における電子帳簿とは

今回も、前回に引き続き、TAX(税金)ライターとしてご活躍の阿部正仁氏に「電子帳簿について」解説していただきます。

第1回目の記事は以下からご覧ください。
領収書の電子化について(1)~中小企業が知っておきたい電子帳簿の概要

領収書の電子化

会計における電子帳簿は電子帳簿保存法でルールが定められています。まずは電子帳簿のアウトラインを見ていきましょう。

電子帳簿は4種類ある

電子帳簿は4種類あり、経理を合理化するためにはアウトラインを押えておきたいところです。

1.電子取引に関する書類
紙を一切使用しないで外部との やり取りをする書類です。取引対象者に従業員などの社内決済は含まれません。経理の合理化に適した電子帳簿といえるでしょう。
税法上、電子取引は次のように定められています。

【いわゆるEDI(Electronic Data Interchange)取引】
請求書などの書類のやり取りを企業間の独自のネットワークで行うことを指します。

【インターネット等による取引】
直接インターネットで企業間取引することを指します。具体例として、電子メールによるやり取り(メールや請求書などの添付ファイルを指します)、サイトを通じたやり取り(アマゾンや楽天などの通販サイトが該当します)が挙げられています。

【その他】
外部との請求書などをFAX サーバーで受信するなど紙を使用しない書類が挙げられます。

2.会計帳簿
おもに電子帳簿保存法に対応した会計ソフトで作成した会計帳簿のことを指します。

3.自社で作成した書類
おもに販売管理システムで作成した請求書、納品書、見積書などの書類のことを指します。

4.相手から受領した紙媒体の書類
相手から紙媒体で受領した領収書、請求書などの書類をスキャナーで保存します。

電子取引に関する書類を電子媒体で保存するルール

請求書など電子取引に関する書類を単に添付ファイルなどの電子媒体で保存するだけでは不十分です。そこで、保存するためのルールを紹介します。

1.税務署への申請は不要
他の電子帳簿と異なり、税務署へ申請して、税務署長などの承認を得る必要はありません。つまり、全ての会社に関係します。

2.基本的に 運用規定の作成が必要
電子取引のデータの改ざんを防止するため、「誰を書類の管理責任者にするのか」など具体的な管理方法について定めた運用規定の作成が求められます。たとえば、国税庁の通達での例示を要約すると次の通りです。ただし例外として、運用規定に代えてタイムスタンプを付与することが認められています。

【自らの規程のみによって防止する場合】
・データの訂正削除を原則禁止
・業務処理上の都合により、データを訂正又は削除する場合の事務処理手続(訂正削除日、訂正削除理由、訂正削除内容、処理担当者の氏名の記録及び保存)
・データ管理責任者及び処理責任者の明確化

【取引相手との契約によって防止する場合】
電子取引の種類を問わず、取引相手とデータ訂正等の防止に関する条項を含む契約を行うこと

しかし運用規定を作成する代わりに、電子取引に関する書類にタイムスタンプを付与するが認められています。タイムスタンプ(デジタルタイムスタンプ)とは、電子データがある時刻に確実に存在していたことを証明する電子的な時刻証明書です。要するに「運用規定の作成」または「タイムスタンプの付与」のどちらかを選択することになります。

3.電子媒体の代わりに紙媒体の保存が認められる
電子取引に関する書類は電子媒体で保存するのが基本的なルールですが、プリントアウトして紙媒体での保存も認められています。

会計帳簿を電子媒体で保存するルール

中小企業が会計帳簿を電子媒体で保存するためには、電子帳簿保存法に対応している会計ソフト の導入が必須です。具体的なルールを見ていきましょう。

1.検索機能があること
2項目以上を抽出して検索できることが電子媒体で保存するためのルールです。たとえば、取引金額100万円の売上高を検索するとします。その場合、「勘定科目は売上高、取引金額は100万円」で検索できることが求められます。

2.データの削除・訂正の履歴が残せること
データ登録後に1週間過ぎてから削除や訂正をする場合、その履歴を残さなければなりません。たとえば、売上高100万円を削除したり、取引金額を「100万円→80万円」に訂正したりした場合、その履歴を残す必要があります。つまり、元のデータ「売上高100万円」を確認できることが求められます。

3.範囲指定ができること
たとえば、日付を4月1日~4月30日、取引金額を100万円~300万円など範囲を指定してデータを抽出できることが求められます。

4.税務署への申請が必要
電子媒体で保存する期間の開始日の3カ月前までに税務署へ申請し、税務署長などの承認を得る必要があります。申請する際には次のことが求められます。
・電子帳簿の記載(例 仕訳帳、総勘定元帳など)
・適用される税法の種類(例 法人税法 消費税法など)
・電子帳簿の保存方法
・使用するコンピューターやプリンタなど機器のメーカー、機器の名称、台数、設置場所の記載
・使用する会計ソフトのメーカー名、メーカーの住所

また、添付書類はおもに次の通りです。
・システムの説明書
・運用規定
・電子保存をアウトソーシングする場合はその契約書の写し
など

5.運用規定の作成が必要
たとえば、会計ソフトへの入力者やチェック者などを定めた書類の作成が求められます。

自社で作成した書類を電子媒体で保存するルール

電子媒体で保存するためには電子帳簿保存法に対応している販売管理ソフト の導入が必須です。保存するルールは会計帳簿と同じであり、次の通りです。

1.検索機能があること

2.データの削除・訂正の履歴が残せること

3.範囲指定ができること

4.税務署への申請が必要

5.運用規定の作成が必要
たとえば、納品者や請求書の作成者などを定めた書類の作成が求められます。

相手から受領した紙媒体の書類を電子媒体で保存するルール

紙媒体の書類でスキャナー保存するため、他の電子帳簿よりもルールが複雑です。具体的なルールを紹介します。

1.検索機能 があること
会計ソフトや経費精算システムなどの機能により、スキャナー保存した画像をクラウドやサーバーなどにアップすれば、検索が可能です。

2.データの削除・訂正の履歴が残せること

3.範囲指定ができること

4.税務署への申請が必要
スキャナー保存の特徴は、ファイルへの記録方法を記載する点です。たとえば、領収書はPDF形式、請求書はXML形式、納品書はTIF形式といったように申請書へ記載します。

5.運用規定の作成が必要

6.次の条件をクリアできるスキャナー・スマートフォン・デジタルカメラを用意する
(イ)大きさがA4以下の書類:解像度が200dpi相当以上、24ビットカラーであること
(ロ)大きさがA4を超える書類:上記(イ)に加えて、紙の大きさの情報が必要
(ハ)スマートフォンやデジタルカメラで撮影した場合の特例:書類の大きさに関係なく、(イ)と同じ条件をクリアすること

7.スキャナー保存をする単位は書類の全てを網羅すること
具体的には次の2パターンに区分されます。

(イ)複数枚の書類を1枚の画像にまとめられる場合
たとえば、複数枚の領収書を1台の機器でまとめてスキャナー保存をすることが認められています。

(ロ)1つの書類を1枚の画像に収まり切れない場合
たとえば、冊子になっている契約書なら書類のすべてをスキャナー保存して、複数枚の画像を作成する必要があります 。なお、複数枚の画像を一つのフォルダにまとめることはできません。

8.電子媒体で保存するプロセスを整備する

電子媒体で保存するプロセスを整備するためのルール

相手から紙媒体の書類を受領して、電子媒体で保存するためのプロセスは細かく定められています。また、小規模事業者以外と小規模事業者ではプロセスが異なります。そこで、具体的なルールを見ていきましょう。1~3はすべての事業者に共通し、4は小規模事業者のみ適用できます。

1.基本的なプロセス
相手から受領した紙媒体の書類を次のプロセスで電子化していきます。
(1)紙媒体の書類をスキャンする
(2)スキャンした電子媒体の書類をクラウド上やサーバーにアップロードし、タイムスタンプを付与する
(3)タイムスタンプを付与した電子媒体の書類である画像と紙媒体の書類が一致しているかをチェックし、相互けん制をする
(4)画像と紙媒体の書類を定期検査(最終チェック)して、両者が一致していれば保存 または破棄するかどうかを選択する

2.紙媒体の書類を2つに区分する
そもそも紙媒体の書類は2つに区分できます。それは一般書類と重要書類であり、電子媒体で保存するルールが異なります。

(イ)一般書類
お金の流れと連動しない書類のことを指します。
例)注文書、見積書、保険契約申込書、電話加入契約申込書、クレジットカード発行申込書、口座振替依頼書、商品や材料などを購入した者が作成する検収書・商品受取書など、自社が作成した納品書の写し など

(ロ)重要書類
お金や物の流れと直結する書類のことを指します。
例)契約書、領収書、預り証、借用証書、預金通帳、小切手、約束手形、請求書、納品書、送り状、輸出証明書 など

3.一般書類の保存方法
相手から受領した紙媒体の一般書類は次の手順で電子化していきます。
(1)3カ月に一度など会社の定めた期間でタイムスタンプを付与する
(2)上記(1)の後、画像と紙媒体の書類が一致していれば、保存 または破棄するかどうかを選択する
(3)万が一、紙媒体の書類と画像が一致していなければ、受領者へ差し戻す

4.重要書類の保存方法
紙媒体の重要書類を電子化するまでのプロセスについて、普小規模事業者以外が採用する基本的なルールと小規模事業者の特例に分けて説明します。なお、小規模事業者に該当する範囲については、後述します。

(イ)基本的なルール
紙媒体の重要書類を電子化するまでには、本人を含めて最低3人必要です。人員は従業員または外注先を問いません 。もちろん、外注先には顧問税理士も含まれます。

(1)受領した紙媒体の重要書類にタイムスタンプを付与する
受領した日から最長で「1カ月間+7日間」までにタイムスタンプを付与します。付与する人については、受領した本人も含めて誰でも大丈夫です。

(2)相互けん制をする
受領した本人を除いた確認者がタイムスタンプを付与した画像と紙媒体の書類が一致しているかどうかをチェックします。一致していなければ、受領者へ差し戻します。

(3)定期検査をする
タイムスタンプを付与した画像と紙媒体の書類が一致しているかどうかのチェックを受領した本人と相互けん制の確認者を除いた人が実施します。

(4)画像と紙媒体が一致していれば、重要書類を保存または破棄するかどうかを選択する
※一致していなければ、確認者へ差し戻します。

(ロ)小規模事業者の特例
小規模事業者は顧問税理士が定期検査をするのを条件に、相互けん制を省略できます。それが小規模事業者の特例を受けるメリットで す。それでは、紙媒体の重要書類を電子化するまでのプロセスを紹介します。特に事前の申請は不要です。

(1)本人が受領した日から3日以内にフルネームで署名して、タイムスタンプを付与する
たとえば、出張先で領収書を受領したとします。そのとき、受領した本人が受領した日から3日以内にスマートフォンなどの機器で撮影して、フルネームでの署名とタイムスタンプを付与します。署名の代わりに押印することは認められません。

仮に3日間を過ぎた場合は、基本的に小規模事業者の特例は活用できません。その場合は、基本的なルールに則って、相互けん制が必要となります。

(2)顧問税理士が定期検査をする
小規模事業者の特例での定期検査は顧問税理士に限定されています。そのため、他の人が定期検査をすることは認められません。

(3)紙媒体の重要書類を保存または破棄するかどうかを選択する

(ハ)小規模事業者の範囲
業種に応じて、経営者を除いた従業員が次の人数以下である法人と個人事業主のことを指します。
・製造業や建設業など:常時従業員数が20名以下
・小売業、卸売業、サービス業:常時従業員数が5名以下

(ニ)やむを得ない事情により本人が受領後3日以内でタイムスタンプを付与できない場合は?
たとえば、海外出張で領収書を受領したとします。そのとき、インターネットの環境の不備でサーバーなどへ送信できずにタイムスタンプを付与できない場合は、特例として受領後3日を超えて署名、タイムスタンプを付与することは認められます。しかし、「単に忘れていた」「忙しかった」という理由は通用しません。

会計における電子帳簿を導入するポイント

電子帳簿の導入は最初の方向づけが肝心です。たとえば、経理の合理化を意図していたのに、実際は紙媒体で保存するより手間がかかれば本末転倒です。それでは、経理事務の人件費を中心とした費用対効果の小さいコストにお金をかけてしまう羽目になります。そこで、経理の合理化をゴールに電子帳簿の導入するポイントを解説します。

目的を明確にする

電子帳簿を導入する目的は費用対効果の小さいコストの削減です。税金と同じように、会計帳簿の作成や書類の保存に人員をかけても、売上や利益が増えないのは明らかです。そのため、節税対策と同様に電子帳簿の導入により費用対効果の小さいコストを下げるという目的を明確にしましょう。また、次のメリットについても意識しましょう。

1.事務が効率化できる
領収書を日付順など規則に沿ってスクラップブックに貼る作業や経費精算システムの導入したりして従業員や経営者の手間が省けます。

2.保管コストが削減できる
紙媒体での書類の保管は面積を要します。その点、電子保存はスペースを取りません。たとえば、業務量が増えて広いスペースが必要となったとします。当然、スペースを広くすれば負担する家賃が増加します。しかし、紙媒体での保存から電子保存に切り替えることで、新たなスペースの確保が回避できます。

3.危機管理に役立つ
BCP(Business Continuity Plan)という災害などリスクが発生したときに重要業務が中断しないことが実現しやすいです。たとえば、紙媒体での書類を保存する箇所は1カ所に限られ、火災により紛失すれば、事業に支障をきたしてしまいます。ところが、電子保存は複数個所で保管できるため、紛失による重要業務の中断が回避できます。

紙媒体の書類のやり取りを電子取引にシフトする

電子帳簿の導入に成功するかどうかは、いかに紙媒体の書類のやり取りを電子取引にするのかにかかっています。たとえば、商品を購入したときの請求書などを紙媒体で受領すると、ファイルに閉じて保存しなければなりません。当然、ファイルに閉じこむのに人手を要します。一方、購入先との請求書のやりとりを電子媒体に代えたり、FAXサーバーで保管したりするなど電子取引にシフトすれば、紙媒体で保存する手間が省けます。

また、仮に電子保存するにしてもスキャナー保存してタイムスタンプの付与、相互けん制、定期検査をする必要がなく、運用規定を作成するだけで済むのも電子取引のメリットです。規定の作成は顧問税理士に依頼することになるため、電子取引にシフトする事務的手間はほとんどかかりません。

要する電子帳簿の導入で最も簡単なのが紙媒体の書類のやり取りを電子取引にシフトすることです。

電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入する

電子帳簿保存法に対応した会計ソフトを導入するプロセスは2つ あります。

1.最低条件
電子帳簿保存法に対応した会計ソフトであることを事前に確認することに尽きます。検索機能や訂正履歴を残す機能など会計帳簿を電子媒体で保存する条件は電子帳簿保存に対応した会計ソフトが解決してくれるからです。手間はかかりません。

また、領収書などをスキャナー保存したものにタイムスタンプを付与する機能も会計ソフト選びにかかっています。通常は会計帳簿の作成のオプションとしてタイムスタンプを付与する機能がついています。

もちろん、メーカーに問い合わせれば、電子帳簿保存法に対応しているかどうかを教えてくれます。実際はほとんどの会計ソフトが対応しています。

2.CSV読み込み機能がついている会計ソフトを導入するのがポイント
電子帳簿の導入は経理の合理化が目的です。そのため、領収書などの資料を参照して、会計ソフトへ手入力を極力減らすことがポイントとなります。インターネットバンキングや経費精算システムなどのデータをCSVで切り出し、自動的に会計ソフトへ読み込ませて、会計帳簿の作成を合理化しましょう。

できれば経費精算システムを導入する

そもそも経費精算システムは、紙媒体で受領した領収書をスキャナー保存してタイムスタンプを付与したり、交通費や取引先に対する香典代など領収書を受領できない経費を精算したりすることができ、それは電子取引による書類に該当します。社員が交通費などを精算するとき、出金伝票など所定の用紙に記入する手間が省けます。

一方、会社は経理の合理化につながります。たとえば、従業員が請求する交通費が正しい交通経路に基づいていることを経費精算システムの機能で把握できます。紙媒体と違って、従業員が記入した交通経路の信ぴょう性についての確認作業が省略できます。

経費精算システムがCSVで切り出しができる点は見逃せません。データを会計ソフトに自動的に読み込ませることができます。たとえば、営業担当者が複数いて交通費を負担する頻度が多かったり、紙媒体で受領する領収書の枚数が多かったりする会社には経費精算システムはおすすめです。また、経営者が経費の精算をする回数の多い場合は、事務的手間を省くことにも役立ちます。

顧問税理士を最大限に活用する

会計に関する電子帳簿の導入は決してハードルは低くありません。しかしそれは、すべて自社で行う場合の話です。そのため、会計ソフトやスキャナー保存をする機器の活用などシステムに頼るのはもちろん、顧問税理士を最大限に活用することで電子帳簿の導入のハードルを大きく下げることができます。そこで、顧問税理士を活用するポイントについて解説します。

1.電子帳簿の導入を顧問税理士に打診する
多くの税理士はクライアント企業に対して付加価値の高いサービスを提供したいと考えています。「人件費など費用対効果の小さいコストを下げたい」と理由で電子帳簿の導入を相談すれば、応じてくれる可能性は高いです。

2.税務署への申請手続きを任せる
電子帳簿保存法に基づく税務署への申請手続きは複雑です。たとえば、申請するときに運用規定の添付が求められます。また別の例として、電子帳簿の保存を外注先に依頼する場合、その契約書のコピーの提出が求められるます。

3.運用規定の作成を依頼する
特に電子帳簿の導入には、運用規定の作成が必須であるため、自社で作成する場合、手間がかかります。しかも、電子帳簿保存法の知識を要します。それでは、電子帳簿を導入するハードルが高くなってしまいます。

そこで、電子帳簿の導入段階で作成する運用規定は顧問税理士に任せることが大切となってきます。

4.紙媒体で受領した書類の保存または破棄する判断を相談する
そもそも紙媒体で受領した書類の保存または破棄を吟味するのは、得意先など取引先とのトラブルが発生した場合、法的に証拠となる書類の保存が必要だからです。紙媒体で保存すれば問題ありませんが、電子媒体で保存した書類は基本的に証拠として認められません。そのため、安易に電子媒体で保存する書類を破棄するとトラブルが発生したときに不利となってしまいます。したがって、紙媒体で受領した書類の保存または破棄を自社で判断するのはリスクが伴います。

たとえば、得意先が契約書で定めた支払期日までに売上代金を自社の銀行口座へ振り込まないとします。そのとき、契約書を紙媒体で保存すれば、「契約違反」と得意先に抗議することができます。しかし、電子媒体での保存では、証拠として認められないため、最悪の場合は泣き寝入りするしかありません。

ただ、消費者金融など契約書の冊数が膨大になる傾向がある業種は、紙媒体での保存はスペースの確保が大変です。当然、保存スペースには家賃という費用対効果の小さいコストがかかってしまいます。しかし、電子媒体のみで保存するのはトラブルが発生したときのリスクが高いです。そこで、紙媒体で保存する代わりに、マイクロフィルムを用いることをおすすめします。永久保存できるのはもちろん、紙媒体と同じようにアナログの保存であるため、証拠して認められます。

顧問弁護士がいない中小企業は、保存または破棄の判断を顧問税理士に相談することをおすすめします。

5.電子媒体で保存する書類の吟味を顧問税理士と一緒に行う
電子帳簿保存法は電子媒体で保存する書類を細かく分けることができます。具体的には、拠点単位や部署ごとで電子帳簿を導入するかどうかが決められます。たとえば、総務部門の小口現金の領収書だけを電子媒体で保存することを選択できます。また、経営者が使う交際費の詳細について、顧問税理士を除いた他人に見られたくない場合は、その部分だけ電子帳簿の対象から外すことも可能です。

要するに、電子媒体で保存する書類を自由にカスタマイズできます。方向性を間違えると電子帳簿の対象とする書類の変更手続き面倒なので、導入する段階で慎重に吟味する必要があります。

そのため、電子媒体で保存する書類を吟味するとき、自社だけで判断するよりも、中小企業の経理について多くの事例を知っている顧問税理士に相談したほうが失敗する確率を下げることができます。

6.電子取引のメール本文の削除について相談する
たとえば、購入先から領収書が電子メールの添付ファイルで届いたとします。添付ファイルの保存をするのはもちろんですが、書類によってメールの本文も保存しなければならない場合があります。ちなみに領収書の場合はメール本文の保存が必要です。その分岐点については顧問税理士に相談しましょう。

社内ルールを整備する

電子帳簿を導入しても、経理の合理化につながらなければ意味がありません。また一歩間違えると、社内における不正の温床になり得ます。そのため、電子帳簿の導入する際には、社内ルールの整備が求められます。

1.経費の水増し請求を防止する
相手から受領した紙媒体の書類をスマートフォンやデジタルカメラで撮影したものが電子帳簿と認められる反面、経費の水増し請求のリスクが高くなります。たとえば、営業担当者が得意先を接待したときの領収書を受領したとします。紙媒体なら領収書は1店舗1枚です。しかし、電子媒体で保存する場合は複数枚の領収書を作成することができます。その営業担当者が複数枚の領収書を社内で精算すれば経費の水増し請求です。

そのため、受領した本人がスキャナーで保存する場合は、必ずフルネームで領収書に 直接署名することを徹底させましょう。電子帳簿保存法では、受領した本人と別の人が画像と紙媒体の書類を確認すれば、署名は必要ありませんが、法律よりも経費の水増し請求の防止を優先させるのがいいでしょう。

2.領収書の撮影後は3日以内にタイムスタンプを付与することを徹底周知する
そもそもタイムスタンプを付与するのは、電子媒体の書類を改ざんできないようにするのが目的です。経費の水増し請求の防止など内部けん制のために、紙媒体の書類を受領した本人がスマートフォンなどでスキャナー保存した場合は、3日以内にタイムスタンプを付与することを従業員に徹底周知しましょう。

特にスキャナー保存で小規模事業者の特例を受ける中小企業は撮影後3日以内にタイムスタンプを付与することが必須です。それによって、後は顧問税理士が確認するだけで済み、経理の合理化につながります。

仮に書類を受領した日からスキャナー保存するまで3日を超えると、受領した本人とは別の人が画像と紙媒体の書類を確認しなければなりません。それでは、経費の合理化の足を引っ張り、確認者を設置する必要が生じてしまいます。当然、確認者の設置に伴い、人件費がかかります。費用対効果の小さいコストを下げるのが電子帳簿の導入である以上、撮影後3日以内にタイムスタンプを付与することを従業員に徹底周知しましょう。

3.中小企業の実情に即したスキャナー保存の方法を検討する
小規模事業者の特例では、一般的に自分で署名、スマートフォンで撮影、タイムスタンプを付与する対象となる書類は「領収書」でしょう。しかし、たとえば一人親方の会社なら相手から受領する書類の量は多くありません。そのため、紙媒体の見積書や請求書についてもスキャナーで保存、署名、タイムスタンプを付与することは可能です。

要するに、規模が小さく相手から受領する書類の量が少なければ、領収書を除いた書類も自分でスキャナー保存を完結させることは可能です。

おすすめのソフトと機器

中小企業の実情に即したおすすめの会計ソフトや機器などを見ていきましょう。

1.会計ソフト
費用が安く、税理士が対応している会計ソフトがおすすめです。たとえば次の3つが挙げられます。
・弥生会計
・クラウド会計ソフト freee
・MFクラウド会計

2.経費精算システム
経費精算システムは、交通費など領収書の受領が伴わない経費の支払いが頻繁に発生する場合におすすめです。経費精算システムを使用しなくても、スキャナー保存した領収書については会計ソフトでタイムスタンプを付与することができます。経費精算システムのおもなものは、次の3つです。
・楽々精算システム(CSVを読み込めるすべての会計ソフトに対応)
・MFクラウド経費(MFクラウド会計を使用する場合におすすめ)
・交通費精算 freee(交通費の精算に対応し、会計freeeを使用する場合におすすめ)

3.販売管理ソフト
使用する会計ソフトと同じメーカーのものを使用するのがポイントです。
・弥生販売
・クラウド会計ソフト freee(会計ソフトの機能に付いています)
・MFクラウド請求書

4.機器
最近のスキャナー、スマートフォン、デジタルカメラは性能がよいため、どの機器でも対応できます。したがって、今まで使用している機器で差し支えありません。

電子帳簿保存法は税理士業界の新たな市場になり得る

最後に話が少し変わりますが、税理士業界向けに一言書かせていただきます。

クラウド会計の発展により、預かった領収書などの書類を参照して、会計ソフトへの入力をクライアント企業の代わりに担当する記帳代行業務が縮小傾向にあるのは承知の通りです。実際、機械に奪われそうな仕事ランキングに「会計・経理事務員」が挙げられています。そのため、記帳代行業務を行っている会社は、クライアント企業に対して付加価値の高いサービスの提供が求められています。そのひとつが電子帳簿保存法のスキャナー保存による小規模事業者の特例の定期検査です。

電子帳簿のメリットとして、紙媒体での保存スペースを減らすことで、家賃など管理費用の削減が期待できます。しかし、電子媒体で保存した書類を保存または破棄すべきかどうかを的確に判断できるのは、弁護士を除いては顧問税理士のみでしょう。

小規模事業者の特例の定期検査は税理士の独占業務です。電子帳簿の導入を機に、定期検査の市場への参入を検討してみてはいかがでしょうか。

著者:阿部正仁
TAX(税金)ライター。会計事務所で約10年間の勤務により調査能力を身に付けた結果、企業分析の能力では高い定評を得、法人から直接調査を依頼される実績も持つ。コーチングスキルを活かした取材力で、HP・メディアでは語られない発言を引き出すのが得意。

中小企業の労働生産性を上げるカギは「IT」。3つの事例を紹介

こんにちは。

平成30年4月20日に2018年版「中小企業白書」が公開されました。

白書によると、経常利益が過去最高水準になるなど、中小企業を取り巻く状況は改善傾向にあるものの、大企業との生産性格差は拡大しているとのこと。例えば、製造業の場合、時間当たりの労働生産性は、大企業が6,470円/人時であるのに対して、中小企業は3,623円/人時となっています。人手不足も深刻化していることを考えると、中小企業にとって、従業員1人当たりの労働生産性向上は目の前に差し迫った大きな課題でしょう。

その労働生産性を向上させるカギになるのが「IT」。
ただ、大企業と比較してIT人材が少ない中小企業が、ITを導入するのにはハードルがあるのも事実です。
実際、ITの導入・利用を進める際の課題として「コストが負担できない」「導入の効果がわからない、評価できない」が約3割と高く、次いで「従業員がITを使いこなせない」が約2割と続いています。

そこで白書の中で紹介されている好事例をいくつかご紹介します。

■事例2-4-1:丸友青果株式会社 「タブレットを利用して手作業だった伝票入力を合理化した企業」
年間で約400万円のコスト削減に成功したのが丸友青果。営業担当者が競りの結果を手書きし、事務員が基幹システムに入力していたのを、営業担当者がタブレットで入力する方法に変更したそうです。導入費用は150万円。タブレットはパソコンよりも操作面でのハードルが低く、年配者もすぐに慣れることができたとか。

■事例 2-4-3:有限会社アイグラン 「地元の IT 販売会社と長期的な関係を構築し、 IT に精通した社員がいない中でも着実に IT 化を進展させた企業」
パン製造小売り事業者である同社は、生産工場とパン屋2店舗を展開。各店舗は紙ベースで勤怠情報を管理しており、これを本社で給与ソフトに手入力するという手間が発生していたそうです。これをクラウド給与・就業管理を導入することで、毎日の業務が7人日から3人日に削減。これまで対応していた事務局長が、売り上げや経営に直結する業務により多くの時間を割けるようになったとのこと。またIT導入補助金を活用されたそうです。

■事例 2-4-9:株式会社上間フードアンドライフ 「1 品単位で採算管理ができるシステムの開発により収益性を高めた企業」
正社員23名、パート・アルバイト57名の上間フードアンドライフは、沖縄天ぷらを主力とするお弁当・お惣菜の店舗販売と宅配を手掛けている企業。人手不足からくる将来的な賃金上昇への懸念、飲食業界の利幅の薄さに問題意識があり1品ごとの採算管理が必要であると考え、社内システムの開発に取り組んだそうです。その結果、原価率が5ポイント低下し、収益面が大幅に改善。得られた効果はコストを上回っているそうです。

今回の白書は、ご紹介した他にも好事例が多数紹介されており、中小企業の皆さんが読むと、どんな業種であっても何かしらヒントになることがあるのではないかと感じています。

弊社では中小企業の経営課題をITで解決・サポートしています。かかりつけの医者のように「ちょっと聞いてみよう」と思ってもらえる存在を目指していまので、何かありましたら、遠慮なくお問い合わせください。